――そこで素朴な疑問です。そんなに楽をしながら、収益力を示す売上高に対する経常利益率が平均の倍以上、10%台を維持できるのはなぜですか。
「最近は少し低下しましたが、一九九七年には経常利益率は20%以上ありました。だからといって、スイッチボックスや電線管など我が社の製品に、世界初や超がつくものはありません。法律で寸法も原料も決まっていて、メーカーもごまんとある。そのトップが世界ブランドの松下電工。それなのに、こっちは生意気にも休んでばかりだから、お客さんは腹を立てる。休みが多いと生産が注文に追いつかない。やはりお客さんに逃げられる。これでは会社がやばい(危ない)と、社員は不安になる」
――すると社員はどうしますか。
「勤務時間内で、能率や生産性を上げ、競争力を確保しようと必死になります。世界的にも高学歴な日本の労働者なら、それくらいは自覚し、対策も考えるでしょう。神頼みじゃないが、社員頼みです。うちの社員なら、それぐらいのことはやってしまうはずと」
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――残業が無く、休みが多い代わり、毎月の手取りが少なくなりませんか。
「社員の給料は、少なくとも地域の平均よりかなり上になるようにします。実際、残業をやっている会社よりもましのはず。友人や同級生と比べて、自分が安いと分かったら、絶対に働きません。アメばかりで、ムチのない経営は間違っているそうですが、ムチなんか使う必要はありません。アメを十分にやれば、それだけ働く気になります」
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――ムダと思われたものに意味があるわけですね。同時に、製品に工夫やアイデアがあふれていることでも有名です。
「我が社の製品は、他社も作っているものばかり。それでも他社とまったく同じものは作らない。どこかに違いをつける差別化が鉄則です。でなければ、価格競争になる。規格品でも、法律に触れない程度の工夫はできるのです。例えばスイッチボックスのネジ穴はよそのメーカーはすべて二つだから、うちは四つにした。それだけで、柱に留めやすくなり、売れました。すぐ、まねされるが、次は付属のネジを通常より五ミリ長くした。その違いがお客さまには喜ばれる」
――職場の照明をこまめに消すなどの節約に励む一方、巨費をかけて、ボリショイバレエや京劇を招くメセナ活動を積極的に展開しています。その理由はなんですか。
「文化は支援がないと成り立たない代物です。江戸時代は大名、その後は金持ちが支援してきましたが、税制によって、金持ちがいなくなった。残るのは企業だけです。日本人の心を豊かにするためにも、企業はできる範囲で支援をすべきです。同時に、それによって、未来工業はすごい会社だと言われれば、社員はうれしくなり、やる気を起こすでしょう。小さな節約、大きな浪費には、そんな狙いもあります」
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